山形地方裁判所 事件番号不詳 判決
山形市七日町所在映画館旭座は隣接する紅花劇場、山形文化劇場と共に宮崎合名社の商号の下に宮崎健の個人経営(以下宮崎を使用者と称する)にかかるもの、被告人斎藤方男、同堀米和比湖は右旭座の従業員で昭和二十二年七月二十二日頃右宮崎合名社従業員の大半約三十二名を以て組織された日本映画演劇労働組合東北支部山形分会宮崎従業員組合(以下組合と略称する)という労働組合の幹部(斎藤は組合成立当初は委員長であつたがその後書記長、堀米は会計監査)となつたもの、被告人柴山義憲は仙台市所在日乃出劇場の営業係(東宝株式会社社員)同永沢良は同市所在北松竹映画劇場の事務員(松竹株式会社社員)で共に日本映画演劇労働組合東北支部の常任委員をしているもの、被告人谷口豊一は東京都所在日本映画社社員で日本映画演劇労働組合の常任中央委員をしているものであるところ、右組合はその結成直後当時の使用者宮崎とみさとの間に団体協約を締結し、爾来右とみさに対し該団体協約の履行、待遇改善等を要求していたが、とみさはこれを無視する態度に出た。それで同年十一月十日右とみさの後を受けてその二男前記宮崎健が使用者となるや同年十二月十六日頃右組合は改めて従業員一人平均賃金二千四百円、越冬資金総額四万三百円等を要求し被告人斎藤、堀米等が組合側を代表し使用者と交渉した結果、越冬資金については山形県地方労働委員会の斡旋により半額で妥協を見たが、賃金増額についてはその後重ねて要求をしたにもかかわらず使用者は同二十三年一月十日頃経営困難を盾にしてこれを拒絶したのみならず、被告人斎藤、堀米両名の解雇を言渡したので、組合側は直にこれを労働組合法第十一条違反として右地方労働委員会に提訴する一方、使用者に対しても亦右解雇の撤囘を迫つたけれども健は頑としてこれに応じなかつた為両者の間の空気は頓に険悪となつた。ところが同年二月初旬になつて組合員中脱退するものが続出しその数が十八名にも昇つたので、被告人斎藤、堀米等組合側はこれを使用者側の切崩しと睨み、ことここに至つては最早通常の交渉によつては右要求の貫徹は覚束ない故、寧ろいわゆる経営管理と称し、前記三映画館より旭座を選び、同館に対する使用者の経営に関する一切の支配を排除し、組合独自の立場において同館の興業施設を利用してその業務を続け、その間の経理は組合の管理下に置き、以て同館の業務の正常な運営を阻害することによつて争議を継続し、因つて使用者をして組合の要求を承認せしめる外はないと考え、その頃組合大会を開き争議行為として右のようないわゆる経営管理の方法を採ることを決議し、その後も屡々大会を開いてこの点についての具体策を練る一方、前記日本映画演劇労働組合の東北支部や本部にも連絡をとり右決議の承認を得た。而して被告人柴山及び長沢は前敍のような地位にあつた関係からその頃時折山形にやつて来て組合側の相談に預つており、被告人谷口も亦同月末右争議調査の為本部から山形に派遺されて来た。かくして同年三月一日、被告人等五名外組合員の大方が同市旅籠町後藤屋旅館に会合し、いわゆる経営管理決行の日取(同年三月三日)、場所(旭座)、闘争委員長(被告人斎藤方男)、経営管理中の組合員等の業務分担、経営方針等を決議し、尚被告人柴山、永沢、谷口は右争議行為の指導に当るものとし、更に翌二日の日中被告人等は協議の上いわゆる経営管理の決行について予て組合側に同情を寄せていた国鉄、電産、全逓等の友誼団体に応援方を依頼した上、同日夜同市横町奥山旅館に被告人等五名外全組合員が集合し、明三日午前十時を期して愈旭座の経営管理を断行することにして前記大会決議を再確認したのであつた。そこで右決議を実行する為翌三月三日午前十時頃先ず被告人斎藤、堀米、柴山及び永沢の四名が旭座西側表入口から同館に侵入し、続いて被告人谷口、組合員等が被告人等の依頼により前記友誼団体から来た合計約六十名の応援隊員を率いて同館に侵入し、爾来引続き同年四月二十三日午後四時に至るまで同館の占拠を継続し、その間一般觀客の出入口外一ケ所を除く同館の出入口全部を釘附にし使用者側の者が自由に同館に出入できないようにし、釘附をしない右一般觀客の出入口外一ケ所には前記応援隊員をして終日待機張番せしめ、使用者側の者が同館の営業に従事しようとしても右多数の力を賴んでこれを排除する気勢を示して立寄らしめず、一方被告人等の経営方針の不手際から忽ち上映フイルムの入手困難等に陥り、営業の為同館を開いたのは内僅に十余日に過ぎず、従つて使用者に甚大な損害を蒙らしめ、以て被告人等は共謀の上爾余の組合員等と共に故なく使用者宮崎健の看守する建造物に侵入し且多衆の威力を用いて使用者宮崎健及び使用者側旭座従業員等の業務を妨害したものである。
適用法条。
刑法第百三十条、第六十条、第二百三十四条、第二百三十三条、第六十条、第五十四条第一項前段、第十条、第二十五条、第二百三十七条第一項、第二百三十八条。
一、罪名 いずれも建造物侵入、業務妨害。
二、検察官の求刑 いずれも懲役八月。
三、処分の要旨 いずれも懲役三月、二年間執行猶予。
年月日 昭和二十三年八月六日。
四、上訴の有無 いずれも被告人控訴。